秋霜烈日のバッジは何を語るか

 僕の通っていた大学院では、現役の裁判官や検察官が担当している講義がいくつかありました。その中でも現役の検察官が担当教官となる科目(たいてい刑事実務演習とか刑事実務なんたらとかいう名前がつく)を受講したとき。

 

 ひとくちに検察官といっても、さまざまな検察官がいる。

 すなわち、新人、中堅・ベテラン、管理職クラス(検事正とか)等、キャリアによって異なる。この辺はサラリーマンと一緒であろう。

 うちの院には、中堅・ベテランクラスの検察官が派遣されてきた。つまり現役バリバリの検察官である。

 

 その検察官が、講義の開始と同時に開口一番こんな質問を僕たちに投げかけてきた。

 

「えー、みなさんの中でヤクザと関わりがある、またはヤクザとかかわるおそれのある方はいますか?」

 シーンと静まる講義室。検察官は続ける。

「もし、ヤクザを関わりがある方がいたら、即刻かかわりを断ってください。私は検察官として仕事を続けてきた中で、罪もない一般市民の人たちがヤクザの手によって地獄の底に落とされていくのを数え切れないくらい、本当に嫌というほどみてきました」

「私はみなさんにそんな目にあって欲しくないので今のうちに言っておきます。くれぐれも関わりを持たないように」

 

この言葉を聞いたときに僕は正直、何を大げさなことをと思った。

しかし、後に僕はこの言葉の意味を心の奥底から知ることになる。